自然界にある形を再現CFRPで盆栽を創る

第2話・まずは型製作のキモとなるCADデータ作りから開始

 CFRPで盆栽を再現。難題ではあるけれど、やると決まったからにはまずは盆栽のCADデータ作りから開始だ。とにかくCADデータができないことには型構想も、積層構想も、加工構想も妄想で終わってしまう。

 まずCADデータはリアルさをだすために、弊社所有のレーザートラッカーを使用。これはリバースエンジニアリングという手法で現物のカタチをパソコンに取り込む装置で、もともとは部品などを測定するもの。しかし、最初の段階ではリアルに作ることを意識していたが、実際に作業を進めると難しいことに気づかされる。盆栽という繊細すぎるカタチは、あまり良質なデータが作れないのだ。そこで、レーザー取り込み後のCADデータをアレンジし、幹、枝、葉の配置や表面の質感、自然な雰囲気など、いろいろなテイストをミックスしてCADデータを製作することにした。

 まず盆栽のキモとなる松の針葉部。ここは加工上、本数に限界があるので少量でも多く見えるように配置し、できるだけ長く設定した。また、内・外二重にして角度を変えることで、1本1本が交差し、多く見えるように工夫してみた。

 そして、枝は全体の雰囲気を左右する部分だけに、なるべく本物に近い状態を残すことに。枝自体の表面はポリゴンデータをそのまま使用し、ゴツゴツとした岩のような模様を再現。この段階で枝の位置は一次決定とした。

 幹は松自体の存在感を出すのに重要な部分なので、表面の質感には特にこだわった。サンプルとなる松には表層のめくれがあり、木の躍動感があるが、しかしそれを表現するのは不可能。レーザーで取り込んだデータのままだと、曖昧な質感になってしまう。そこでシルエットは本物を使い、アレンジを加えることで表面の凹凸感、躍動感、存在感を意識して作成。ここは少し部品というか、機械のような感じに仕上げてみた。

 こうしていろいろな要素、手法などをミックスしてなんとかCADデータはできあがった。本物のような、作り物のような、自然の木のような、機械的な木のような‥‥、独特な雰囲気が出ていて、個人的には気に入ったものが完成した。

 

 

 つづいて成形型の構想。自分でマスター(CAD)データを作ったものの、これを積層する型を製作するのは至難の業。たぶん自分にしかできない‥‥というか、普通はやろうとは思わないはずだ。

 まずは針葉部の構想だが、「葉っぱのつぼみ全体を無垢に成形する」と決め、つぼみの数ぶん同じ形状で対処することを考案した。結果、針葉部の型だけで、なんと80ピース。一般業務では考えられない数だ‥‥。ちなみに幹の型は1ピース。しかし、実現するには必要なこと! というわけでいよいよ型の製作を開始。

 つぎに枝の部分。枝の型はマスターモデルより3〜5mmくらいオーバーサイズに成形する予定。これは切削加工のためのシロを考えた結果だ。枝を覆うように溝を設けて、その溝をカーボンで埋めるという構想だ。しかし、ここで問題が発生。複雑に配置された葉部の型と、枝の型とのジョイント案が浮かばない。しかも、ここで積層上のカーボンを通すというテーマもプラス。大きな壁にぶち当たる。こことあそこがこうなって、そうするとあっちがダメだから、じゃあこうすれば‥‥まるで複雑な知恵の輪状態だ。

 そして瞑想にふける(!?)こと2日。そこで名案が浮かんだ。ずばり、位置決めしない案。一般業務だと別ピースの型は位置がでるようにピンを使ったりへこみ形状を付け、パズルのように組み合わせていく。盆栽はカタチが複雑すぎてそれができない。葉部と枝部の型はフリーの状態でCADデータを作り、目検討で位置を決め接着剤で固定する。すなわち反則だ。

 幹部の型は、枝の型とのジョイント部分で少し悩んだが、葉部の型に比べたら簡単なこと。とはいえ、こちらも型を橋渡しするようなモデリングになってしまったりと、一般業務であってはならない形態だが、実現させるにはこの方法しかないようだ。

 そして最後に鉢の型。この部分に関しては通常の構想が適用できた。

 これらの成形型は積層性、脱型性、型精度、割り位置、耐久性などなど、様々な要素をふまえて構想しなければならない。一般業務の場合、ほとんど部品形状であり、製造方法も確立されたもの。それなりに難しさはあるが、カタチにすることはできる。でも、自然の植物である盆栽ではそうはいかない。できることはやるけど、どうしてもできないことは掟破りの構想も必要だ!! と自分に言い聞かせ、なんとか成形型がカタチになった。