- 開発推進ブロック 主任
- 積層室 室長 松沢 成行

- こちらは意匠性を重視した製品。角などの陰になる部分にシートのカット位置を合わせることで、一見すると繊維の切り口がわからないように仕上げることができます。

- 写真は単一方向のUD(ユニディレクション)で、さらに異形となる製品の断面。シートを少しずつずらしながら、かつ左右対称の積層には、難度の高い技術が求められます。

- 当社では最大でφ3000mm×L6000mm、最高温度で400°Cまで対応した3台のオートクレーブを設備。温度分布をモニターで管理し、均一な焼き上がりになるよう細心の注意を払っています。

- プリプレグは生物。使用樹脂によっては常温で3日間と暴露時間が極めて短い素材もあります。当社ではプリプレグの冷凍保管はもちろん、徹底した温度、時間管理を行っています。
地味な作業だからこそのやりがい
私の所属する積層室では、カーボン繊維を型に貼り込み(積層)、オートクレーブで焼き上げるところまでの成形を担当しています。この積層というのはクリーンルームに籠ってやる、とても地味な作業。しかし、だからこその難しさがあり、ミスが許されない仕事です。
作業の大前提にあるのは、設計図面通りにカーボン繊維を配向し、強度や重量を均一に仕上げる、もしくは必要な箇所に必要な強度を持たせること。近年、当社では航空・宇宙事業にも力を入れており、機能におけるより高い精度が求められています。そのためには“確実な積層”で応えなくてはなりません。また、製品によっては意匠性を重視したものもあり、それについては一見してつなぎ目がわからないように注意する。どこで繊維を切って、どのようにつなぎ合わせるか。それを追求すると、貼り込んだカーボンシートの余白がまだ残っていてもカットしなくてはいけないことも。意匠性にこだわればこだわるほど、カーボンシートを贅沢に使ってしまうというわけです。機能性、意匠性、どちらもお客様の要望以上に仕上げる、それが理想ですからね。
焼き上げについては機械(オートクレーブ)の仕事になりますが、実はこの焼いている時間が一番緊張します。基本的には温度と時間をプログラムで設定していますが、温度分布の管理はマニュアルで確認する。型も含めた材料の違い、製品の大きさ等によって温度にムラが出てしまうこともある。陶芸家が焼きの工程で一番気を使っているのと、同じ気持ちと言えますね。
100年後、自分の技術を残したい
私が目標としているのは『100年後、自分の作ったモノが残っている』こと。“モノ”というのは製品としてだけではなく、技術的な意味も込めてです。例えば、建築家のプロが何百年も前に造られた建築物を見て、「これは今でも造れない」と思うことがあると聞きます。それと同じような感じです。
現在のCFRPは、大きな製品では機械で積層することもありますが、いまだほとんどが手作業です。しかし技術の進歩により、近い将来、小さな製品でも機械で積層しているかもしれません。そのときに、自分が手掛けたモノが「あのハンドワークの良さは機械じゃだせない」と言われるようになっていたら嬉しいですね。
だからというわけではないですが、複雑な形状になるほど、チャレンジ精神がかきたてられるし、仕事を終えたときの達成感があります。といっても、実は単純なものほど要求が高く、難しい。積層はものすごく奥が深いんです。少しでも不安があると、それが製品に表れてしまって不出来なものになってしまう。精度を高めるには技術、知識、経験が必要。そのためには勉強あるのみ。これからも多くを学び、それを製品というカタチにして表現していきたいと思っています。
